生成AIを入れて速くなったのが、間違いだけだったとき
要約は速くなったのに、決まるまでの時間は変わっていない。橋を渡れない理由は5つあって、そのうち4つはAIの問題ではありません。

生成AIを入れて1年くらい経った会社で、よく聞く話があります。文章を書くのは速くなった。要約も出る。議事録もまとまる。それなのに、何かが決まるまでの時間は前と変わらない。むしろ、確認しないといけないものが増えて、忙しくなった気がする。
この記事は、社内でAI活用を進める立場の人に向けて書いています。同時に、手元の仕事は速くなったのに全体は速くなっていない、と感じている人にも向いています。原因は個人の使い方ではないので、途中から「誰が何を決めているか」の話になります。
いま、多くの会社は橋の上にいます
私たちは、企業のAI活用をこの順で整理しています。情報を紙から電子に変える段階、業務そのものを作り直す段階、生成AIを使い始める段階、AIを前提に仕事を組み直しはじめる段階、そしてそれが当たり前になる段階です。
多くの会社は、3番目と4番目のあいだにいます。生成AIは使っている。ただ、それを前提に仕事の形が変わってはいない。橋の途中で立っているような状態です。
この4番目以降を「AX」と呼ぶ人が増えています。ただ、この言葉の定義はまだ確定していません。経済産業省の検討ワーキンググループで議論されている段階で、公表されているのは事務局案です。私たちは「経産省がAXをこう定義した」とは書きません。名前より、橋の上で何が起きているかのほうが実務には効きます。
橋を渡れない理由は、5つあります
登壇資料で整理しているのは、次の5つです。
- データが揃っていない
- 業務が標準化されていない
- システムが分断されている
- 権限と責任が曖昧
- 変革を受け止める文化がない
読んで気づくと思いますが、5つのうちAIの話は1つもありません。どれも、生成AIが来る前から積み残していた宿題です。前の段階で片付けなかったものが、そのまま橋の手前に置いてあります。
だから、混乱のほうが速くなります
ここが厄介なところです。宿題を残したまま速い道具を入れると、速くなるのは良いものだけではありません。
業務が標準化されていない状態でAIに任せると、人によって違うやり方が、これまでより速い頻度で増えます。データが揃っていない状態で要約させると、根拠の弱い要約が、これまでより多く回ります。誰が確かめるか決まっていなければ、そのまま次の会議に持ち込まれます。
道具は正しく動いています。速くしろと言われたものを速くしているだけです。速くしてはいけないものが混ざっていた、というほうが実態に近いと思います。
5つのうち、今週動かせるのは1つだけです
データの整備、業務の標準化、システムの統合。この3つは、時間もお金も人も要ります。今週から始められるものではありません。文化の話は、もっと時間がかかります。
残るのは「権限と責任が曖昧」です。これだけは、新しい予算がなくても、今週手をつけられます。しかも、他の4つが片付くまでの被害を小さくする効き方をします。標準化が終わっていなくても、確かめる人が決まっていれば、間違いは会議室の外に出る前に止まります。
ただ、ここで多くの組織がつまずきます。誰が決めていて、誰が確かめているのかは、組織図には書いていないからです。役職は書いてあります。実際に「これは違う」と言う役をやっている人が誰かは、別の話です。
役職ではなく、いまの関わり方で見る
RELACTISは、そこを見るための診断です。24問・約4分で、7つの因子(創出・横断・自走・伝播・仕組み化・検証・関与)と15タイプのどれに近いかが出ます。無料で、登録も要りません。自分の型を知るためにも使えますし、組織で回すと役割ごとの分布が出ます。
「権限と責任」に効くのは、この3つの席です。
分布を見ると、いない席が先に目に入ります。確かめる役が1人もいないまま要約の自動化を広げている、という組み合わせは実際にあります。これは誰かの怠慢ではなく、その役を誰も頼まれていないだけです。頼めば埋まります。
できないことも書いておきます。この診断は席を割り当てません。いま誰がどの形で関わっているかを出すだけで、誰に頼むかを決めるのは人の仕事です。24問で決まるようなら、そもそも組織図で足りています。
明日、ひとつだけ
直近でAIに任せるようにした仕事を、ひとつ思い浮かべてください。要約でも、下書きでも、分類でも構いません。そのうえで、こう聞いてみてください。
「これが間違っていたとき、誰が気づきますか」
名前が出れば、その仕事の確かめる席は埋まっています。出てこなければ、そこが4つ目の壁の入口です。予算も会議も要らずに、今週分かります。
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