RELACTIS ブログ組織への広げ方読了 約4分

「どのAIを入れるか」の会議で、決まらないこと

ツールの比較表は半日あれば作れます。決裁も通ります。それでも半年後に開いている人が3人、ということが起きます。議題を1行だけ書き換えると、そこが見えます。

AI導入の会議は、たいていツールの名前で進みます。どれが安いか、どこまで社内規程に合うか、他社は何を使っているか。資料はきれいにまとまりますし、比較表は半日あれば作れます。決裁も通ります。それでも半年後に見にいくと、開いているのは最初から使っていた3人だけ、ということが普通に起きます。

この記事は、社内でAI活用を進める立場の人に向けて書いています。同時に、その会議に出ている自分がどういう役回りなのか、心当たりのある人にも向けています。この記事で追いかけるのは「誰の何が変わるか」のほうなので、途中から自分の話になります。

その問いは、答えが出てしまう

「どれを入れるか」という問いには、いいところがあります。答えが出るのです。候補が3つあれば、比べて1つ選べます。予算がつき、稟議が回り、導入日が決まります。会議として成立します。

そして、誰の仕事も変わりません。ここが厄介なところです。ツールを選ぶあいだ、席にいる全員の役割・判断の範囲・責任の持ち方は、会議前とまったく同じままです。決めやすい問いは、たいてい何も動かさない問いです。

半年後に「使われていない」と分かったとき、原因は現場の意欲やリテラシーに置かれがちです。ただ、そのとき配られたのはツールだけで、判断の仕方は誰にも配られていません。使われないのは、むしろ順当な結果です。

議題を1行だけ書き換える

私たちが勧めているのは、次の会議の議題を1行だけ書き換えることです。

「どのツールを入れるか」から、「そのツールで、誰の判断が変わるか」へ。

言葉としては小さな差ですが、答えようとすると急に難しくなります。誰の判断が変わるかを言うには、いま誰が何を決めているかを先に知っていなければなりません。要約をAIに任せると決めたとして、その要約を読んで何かを判断していた人がいます。その人の仕事は、読むことから、確かめることに変わります。確かめる技術を持っている人が社内にいるかどうかは、ツールの比較表には載っていません。

この問いに会議室で答えが出なかったとしたら、その日の収穫は、手元に材料がないと分かったことです。ツールの比較をいくら続けても、この材料は増えません。

会議で立てられる6つの問い

AIを前提に仕事を組み直すとき、私たちが法人向けの研修で立てているのは次の6つです。どれも道具の名前を含んでいません。

  1. 誰が考えるのか
  2. 誰が判断するのか
  3. 誰が責任を持つのか
  4. AIに何を任せるのか
  5. 浮いた時間を何に使うのか
  6. 人間に残したい価値は何か

4番目だけがツールの話に見えますが、任せる範囲を決めるには残り5つが要ります。順番も入れ替えないほうがいいです。「何を任せるか」から始めると、結局ツールの機能一覧を眺める時間に戻ります。

5番目は飛ばされやすいところです。浮いた時間の行き先を決めないまま自動化を進めると、空いた分はそのまま別の作業で埋まります。速くなったのに誰も楽になっていない、という状態は、この問いを立てなかったときに出ます。

「AX」という言葉には、まだ寄りかからない

こうした再設計の話は、最近「AX」という言葉で語られます。ただ、この言葉の定義はまだ確定していません。経済産業省の検討ワーキンググループで議論されている段階で、公表されているのは事務局案です。私たちは記事でも提案でも「経産省がAXをこう定義した」とは書かないようにしています。事実と違うからです。

ただ、言葉が固まっていなくても、会議は困りません。決めたいのは、誰の判断が変わるかです。呼び名はあとから付いてきますし、付く前からその問いは立てられます。

誰の判断が変わるかは、推測では書けない

6つの問いに答えようとすると、たいてい同じところで止まります。いま社内の誰が、AIに対してどう関わっているのかが分からないのです。分かっているつもりでも、名前が挙がるのは声の大きい数人だけになります。

私たちが作っているRELACTISは、そこを埋めるための道具です。24問・約4分で、7つの因子(創出・横断・自走・伝播・仕組み化・検証・関与)と15タイプのどれに近いかが出ます。無料で、登録も要りません。個人が自分の型を知るためにも使えますし、組織で回すと役割ごとの分布が出ます。

6つの問いに引きつけて言うと、たとえばこうなります。

分布を見ると、誰がいるかより、誰がいないかのほうが目につきます。確かめる役がひとりもいない組織で要約の自動化を進めると、間違った要約がそのまま流れます。現場の力量とは関係のない話で、席がひとつ空いているだけです。空いていると分かれば、任命するか、外から借りるか、その工程を今は自動化しないか、という判断ができます。

ひとつ断っておくと、この診断が言い当てるのは「どういう形で関わっているか」までです。なぜその人がそう関わるのかという中身までは、24問では出ません。そこは本人に話してもらうしかない部分だと考えていて、分布はその会話を始めるための材料という位置づけです。

次の議題の、1行目を変える

次にAI関連の議題が回ってきたら、書き出しを変えてみてください。「導入ツールの選定について」ではなく、「このツールを入れると、誰の判断が変わるか」。それだけです。

場が静かになったら、それが今日いちばん役に立った15秒です。そこから次にやることが1つ決まります。社内の誰がいまAIにどう関わっているのかを、実物で見にいくことです。

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