AI活用は、チームの組み方で決まる——場面ごとに向いている人が違う
全社にAIを入れて、研修もした。それでも使っているのは一部の人だけ。この止まり方には、わりとはっきりした理由があります。

私たちがこの診断を作った出発点は、うまくいった話ではありません。ある会社でAIを全社導入して、使われなかったという経験です。導入して、一律の研修をして、他社の事例を配って「自分の業務で使えるところを探してください」と伝える。よくあるやり方ですし、私たちもそうしました。それで、一部の人だけが使う状態になりました。
あとから振り返ると、この進め方には抜けているものがありました。誰がどの役割に向いているかを一度も見ていないのです。全員を同じ「AIを使える人」にしようとして、そこへ一直線に向かっていました。
別の現場では、もっとはっきりした形でそれが出ました。社内にDXの学校を作って、現場から年間284個の業務改善アプリが生まれた組織があります。ノーコードなので、誰でも作れる。ところが、進んだ部署と進まなかった部署に割れました。何が違ったのか。当時いろいろ疑いましたが、いちばん効いていたのは上司がその意義を理解して後押ししたかどうかでした。作ったアプリが使われた部署と、作ったのに埋もれた部署。現場の努力は同じだったのに、結果が分かれています。
場面が変わると、向いている人も変わる
AI活用が組織に根づいていく流れを追うと、だいたい次の5つが出てきます。探して、試して、確かめて、誰でも回せる形にして、広げる。
この5つは、それぞれ求められるものが違います。噛み合う組み合わせの一例を挙げると、こうなります。
- 探すのは、誰も試していない使い方を持ち込む人です
- 試すのは、自分の業務で実際に回してみる人です
- 確かめるのは、出力を疑って、外に出す前に止める人です
- 形にするのは、一度の成功を誰がやっても同じ結果が出るようにする人です
- 広げるのは、相手の業務の言葉に翻訳して渡す人です
断っておくと、これは一例です。5つに決まっているわけでも、担い手がこの並びに固定されるわけでもありません。組織によって切り方は変わりますし、1人が2つ3つを兼ねることもあります。ここで見てほしいのは並びそのものではなく、場面が違えば、向いている人も違うということのほうです。
そして、この見方がいちばん効くのは、埋まっているところを数えたときではありません。空いているところを見つけたときです。
- 探す人がいないと、新しい打ち手がそもそも出てきません
- 確かめる人がいないと、品質の事故が起きます。一度起きると、その後の提案が全部通らなくなります
- 形にする人がいないと、うまくいった工夫が個人技のまま終わります。その人が異動すると消えます
- 広げる人がいないと、一部の部署で止まります。冒頭の話がこれです
「うちはAI活用が進んでいない」と言うとき、たいていは全体の熱量の話をしています。でも実際に止まっている場所は、この4つのどれかに絞れることが多いんですね。
「うちには開拓者型がいない」は、詰みではない
研修の場でこの話をすると、必ず出てくる質問があります。空いている段が見つかったあと、「うちにはその役ができる人がいません」というものです。
探す人がいないとき、自社で発明する必要はありません。近道は、外部の事例を持ち込む役を1人決めてしまうことです。他社が試して形になったものを拾ってきて、自社の業務に当てて考える。これは発明とは別の仕事で、向いている人も違います。
確かめる役はもっと分かりやすくて、すでに社内にいるのに、役として置かれていないことが多いです。会議で「それ、本当に大丈夫ですか」と最初に言う人。多くの職場でこの人は推進の障害物として扱われますが、粗が見えるというのは訓練で身につけにくい資質です。
私たちがワークショップで実際に使っている返し方は単純で、「このプロンプトの欠点を見つけてください」と依頼するというものです。批評の対象を、AI一般から目の前の出力へ移す。それだけで、同じ人が検証者型として働き始めます。この移り方については別の記事にくわしく書きました。
測る前に、必ず言っておくこと
ここまでの話には前提があります。人を役割で見るという話は、やり方を間違えると人事評価の匂いがします。そうなった瞬間、この見方は使い物にならなくなります。
なので私たちは、測る前に必ず3つ宣言します。
- タイプに優劣はありません。どれも要る役なので、上下がつきません
- 1人で全部を担う必要はありません。むしろ担おうとすると、どこかが薄くなります
- 役割は固定ではなく、変わります。いま検証の役でも、来年は標準化に回るかもしれません
これは場を和ませるための前置きではありません。この宣言をするかどうかで、返ってくる答えが変わります。評価に使われるかもしれないと思われた瞬間、人は「求められていそうな答え」を返します。そして、いちばん正直に答えてほしいのは、まだ使っていない人と疑っている人のほうです。推進がうまくいくかどうかを実際に握っているのは、その人たちだからです。
明日、ひとつだけ動かすなら
紙を1枚出して、自分の部署のAI活用を場面ごとに書き出してみてください。5つでなくて構いません。3つでも4つでも、自分たちの実感に合う切り方でいいです。
書けたら、それぞれに人の名前を置いてみます。ここで手が止まったところが、たぶんいま止まっている場所です。全員の熱量を上げようとする前に、そこに1人置けないかを考えるほうが早いと思います。
自分がどこに向いているかは、24問・約4分の無料診断で分かります。チームで受けると、役割ごとの分布と、誰も立っていない場所が1枚で出ます。組織向けの診断はそこまでを行います。
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