Slackの5つのAIペルソナと、15タイプの解像度の違い
Slackの調査部門が示した5つの人物像は、職場で見えていたのに言葉になっていなかったものに、きちんと名前をつけてくれました。では、その解像度を15まで上げると何が変わるのでしょうか。

職場のAI活用について何か読んでいれば、Slackの5つのAIペルソナを見かけたことがあるかもしれませんね。Slack Workforce Labが描いたのは、自分の職場ですぐ誰かの顔が浮かぶ5人でした。使い倒して周りにも話す人、こっそり使っていて表には出さない人、そもそも関わりたくない人、熱心に応援するけれど自分ではあまり触らない人、そして、まだ様子を見ている人です。
この5つが刺さるのは、みんな薄々わかっているのに口に出していなかったことを言い当てているからです。人によって違うのは、AIが上手か下手かではなく、どういう距離の取り方をしているかだ、ということですね。
この見立てに、私も賛成です。そのうえで、5つはこの話の出発点で、続きはもう少し先にあります。RELACTISは同じ地形を15タイプで見ていて、その下に創出・横断・自走・伝播・仕組み化・検証・関与という7つの因子を置いています。この記事では、二つの地図がだいたいどう重なるのか、そして解像度を上げると何ができるようになるのかを書きます。
5つの人物像が、正しく捉えていること
人物像で考えるやり方の強みは、もうひとつのやり方と比べるとよくわかります。放っておくと必ず出てくるのは、「AI習熟度」というつまみを一本だけ用意して、全員をその上に並べるほうです。順位がつくと人は身構えますし、身構えた人は、こちらが聞きたそうな答えを返してきます。人物像なら、「あなたはまだ様子見のほうですね」と言われても、採点された気はしません。
それに、点数では測れないものが人物像には入っています。自分をどう見ているか、そしてどう感じているか、です。関わりたくない人は、使い倒す人とは技術との関係そのものが違います。上下に並ぶ話ではありません。こっそり使っている人が社内でいちばん詳しかった、ということもよくありますよね。その人をほかと分けているのは、能力よりルールへの信頼のほうです。順位づけをやめて関係の地図として見た瞬間に、問いが変わります。「どうやって全員を上のレベルへ引き上げるか」ではなく、「この人には何が要るのか」を考えるようになります。
5つの区切りでは、足りなくなるところ
やっかいなのは、その「この人には何が要るのか」に、5分類がいちばん答えにくいことです。私が5分類でいちばん惜しいと思うのも、ここです。区切りが広すぎます。
たとえば「使い倒して、周りにも話す人」を見てみます。ひとりの人物像に見えますが、近くで見ると少なくとも三種類に分かれます。頼まれてもいない使い方を次々に思いつくけれど、手元のメモは半分書きかけのままの人がいます。発明はあまりしないけれど、同僚の業務に合わせて「あなたの場合はこう使えますよ」と翻訳するのがうまい人もいます。ひとつの用途だけをとことん深く掘って、社内でいちばん質の高い出力を出している人もいます。熱量は同じですし、5分類ならどれも同じ区切りに入ります。でも、同じ仕事を三人に渡したら、そのうち二人は役割を取り違えたことになりますよね。
「様子を見ている人」はもっと曖昧です。ここに入っているのは、教わればそのとおりにずっと正確に回してくれる人、もう自分の仕事には関係ないと静かに結論して、場に合わせて頷いているだけの人、そして根拠を見せてもらうまでは判断を保留すると決めている人です。三人とも、外から見えるふるまいはまったく同じです。礼儀正しくしていて、そして使いません。それでいて、必要としているものはほぼ正反対なんですね。
だいたいこのあたり、という重ね方
重ねる前に、二つ断っておきます。作った人も目的も違う道具なので、対応は目安で、対訳表のようにきっちりとは重なりません。それに人は点ではないので、どちらの地図でも区切りをまたいでいるのが普通です。そのうえで、だいたいこのあたり、という感じで並べてみます。
- 使い倒して、周りにも話す人は、だいたい「創る」と「広める」の側に散ります。開拓者型、編集者型、職人型、仕組み化型、伝道師型のあたりです。あまり吹聴せずに使い込んでいる人は、独学実践者型に寄ります。
- こっそり使っている人は、この重ね方でいちばんきれいに収まります。先行実践者型です。制度が整うより先に、自分の工夫でもう使い始めている人たちを指します。
- 関わりたくない人は批評家型に近いところです。ただ、ひとつ付け加えることがあります。粗を見抜く力そのものは本物であることが多く、それを出力の検証に向けたとき、この人は検証者型に変わります。
- 応援するけれど自分では触らない人は、スポンサー型と依頼者型のあたりです。予算や時間や場を用意したり、「誰に頼めばいいか」を判断したりして貢献している人たちです。良いツールを見つけて持ち込むところまでが役目で、その先には自分では踏み込まない人もいます。そういう人の隣には、目利き型がいます。
- 様子を見ている人は、いちばん広く散らばります。静かな未使用者や習得者型はもちろん、「ボタンを押せば動くなら使う」という利用者型まで届くことがあります。根拠を見せてもらうまで判断を保留している人は、批評家型や検証者型のほうへ抜けていきます。
重ねてみると、それだけで分かることがあります。5つのうち3つは、必要なものがまったく違う複数のタイプに割れます。Slackの5つは会話を始めるために作られていて、その役目は見事に果たしています。まとめれば何かは落ちる、というだけの話です。知りたいのは、何が落ちるのか、そしてそれがいつ問題になるのか、のほうです。
解像度が変えるのは、「次に誰へ何を頼むか」
困るのは、人を描写する段階から、何かを決める段階に移った瞬間です。細かい地図でしかできない判断を、三つ挙げます。
最初に試す人を選ぶとき。新しいツールの一人目には、創出と自走が高い人が向いています。粗さに苛立たず、誰も予想していなかった使い道を三つ見つけてくる人、つまり開拓者型です。同じ役を利用者型に渡すと、手順どおりに確かめた丁寧な報告が返ってきます。検証者型に渡せば、試用レポートというよりリスク評価が上がってきます。どちらも正確な仕事なのですが、その場で知りたかったのは「どこまで使えるか」のほうでした。5分類でわかるのは「誰が乗り気か」までで、因子のほうは「誰が自分から探しに行くか」を教えてくれます。
品質の層をつくるとき。AIを使う流れには、遅かれ早かれ「この出力、根拠は?」と最初に聞く人が必要になります。外から見ると、この人は関わりたくない側に見えます。ブレーキ役で、止める人だと受け取られるんですね。ここで因子を見ると、違いがはっきりします。検証者型は、検証が高いだけでなく、実際に手を動かしている関与も高いのが特徴です。批評家型は、手を動かす前のところで批評します。検証者型を「反発している人」と取り違えると、その取り組みがいちばん必要としていた人を、自分の手で外すことになります。
広げる人を選ぶとき。AIを上手に使えることと、AIを教えられることは、別の資質です。伝播の因子が見ているのはそこです。伝道師型は、機能の説明を相手の業務の言葉に翻訳します。開拓者型のデモに、周りは感心します。伝道師型の手ほどきは、一週間後もまだ使われています。上手さだけで社内の先生役を決めると、たいてい違う人を選んでしまうんですね。
いま挙げた三つ、つまり一人目と品質の層と広げる人は、5つの地図ではたいてい「使い倒す人」の中に一緒に入っているか、「様子見」の中に隠れています。15タイプでやりたいのは、役割を配る前にこの三人を見分けることです。配り終えたあとで気づくのでは遅いですから。
チーム単位で並べてみると、もう少し面白くなります。推進役が何人いるかより、検証の席が埋まっているか、仕組み化の席が空いたままになっていないか。そちらのほうが効いてくることがあります。ただ、これは「そう見ると面白い」という私の観察で、この記事の本題からは外れます。診断はあくまで、あなたひとりが自分の傾きに名前をつけるためのものです。
二つの地図は、同じことを言っている
違いよりも、一致しているところのほうが大事だと私は思います。どちらの見方も、AI活用は遅れている人が下にいる階段ではない、と言っています。そして、見るべきなのは能力より関係のほうだ、とも言っています。Slackの5つが、あなたの職場で見えていたものに言葉を与えたのなら、15タイプはその次の一文を与えます。この人には何が要るのか、誰と組むと伸びるのか、どこに落とし穴があるのか。そこまで踏み込みます。
解像度の違いは、自分で試してみるのがいちばん早いです。5つのペルソナを読んだとき、たぶん数秒で自分の区切りがわかったはずです。24問の診断は、その先まで行きます。出るのは主タイプと7因子のグラフで、型が拮抗していれば、その後ろに隠れた第二・第三の顔まで見えます。5つの区切りは、職場を語るときには十分に働きます。もう少し細かいところが要るのは、自分の次の一歩を決めるときですよね。
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